数ある職業のなかでも、スケジュールが早朝から深夜までに及び、件数も多いエディターは、一体どんな手帳を使っているの? 出版社・小学館の編集者たちに伺うシリーズ第3回目は、ラグジュアリーマガジン『Precious』のエディトリアル・ディレクター/オフィスHATSU主宰の、喜多容子さんの手帳です。

Q.お使いの手帳ブランドについて教えてください。
Preciousのエディトリアル・ディレクター、喜多容子さんの、クオバディスとエルメスの手帳です
Preciousのエディトリアル・ディレクター、喜多容子さんの、クオバディスとエルメスの手帳です

仕事とプライベートで手帳を使い分けています。仕事用で使っているのは、クオバディスの正方形のタイプ。これは15年以上前から愛用しています。1週間見開きのバーチカルなので時間を把握しやすく、頭の中でも予定を整理しやすいんです。私たちのような仕事は1日の予定が多く、たとえば、撮影や会議、展示会などで複数の場所に出入りすることが多々あります。スケジュールをしっかりと整理できていないと仕事が回らないので、同業者でもクオバディスを使っている人は多いですね。

プライベートでは、エルメスのクロコダイルの手帳を8〜9年ほど使っています。スタイリストの犬走比佐乃さんとパリに行った際に、彼女が「記念になるようなものを買いたい!」ということで、ふたりでエルメスにバッグを買いに行ったんです。そこで、彼女がバッグを選んでいるのを待っている間にふと見つけたのが、この手帳でした。素材はブルーのクロコダイルですが、腑(鱗の部分)が小さく並んでいるのがとても素敵で、思わず衝動買いしてしまいました。

クオバディスとエルメスの手帳のバーチカルなページ(見開き)
クオバディスとエルメスの手帳のバーチカルなページ(見開き)
Q.どんなところがお気に入りですか?

クオバディスの手帳は、適度な厚みがあり、絶妙な存在感があるところがいいですね。カバーもさまざまなカラーが用意されているので、年ごとにカバーの色を変えて楽しんでいます。エルメスの手帳は、小さいので手のひらに収まりがよいところです。以前はシステム手帳を使っていましたが、分厚くてとても重かった。そういうこともあり、軽くて小さいところがお気に入りです。私にとって、この手帳はバッグの中のお財布と同じようなものなので、常に持ち歩いていますね。だいぶ色褪せてしまいましたが、購入したばかりの頃はブルーの色がとても綺麗だったので、財布やキーホルダーもブルーで統一したりしていました。

Q.これだけは譲れない!というポイントは?

最近はウェブ上でスケジュールを管理する方が多いと思いますし、私自身も、手帳と併用してウェブ上でスケジュールを管理しています。ですが、紙には、実際に書いたり消したりすることで、頭の中を整理できるというよさがあると思うんです。

私は、もう20年以上も、自分が着ていた服のコーディネートのイラストを手帳にスケッチしています。日々の着こなしのヒントにもなりますし、職業柄、「この時期にはどのような服装だったのか?」ということが気になるのです。ファッションを先取りしていく仕事だからこそ、季節ごとの“リアルな着こなし”はとても重要な指標。たとえば、「トレンチコートはいつくらいから着る?」といったことは、皆さんがよく悩まれることですよね。そんな時に、自分が描いたイラストを見返すことで、“リアルな着こなし”を思い出せる。こういったことができるのは、紙ならではのよさなのではないでしょうか。

手帳を使う喜多さん
手帳を使う喜多さん
Q.これまでの手帳遍歴は?

クオバディスもエルメスも長年使っているので、ほかの手帳に浮気をするといったことはなかったですね。ちなみに、以前使っていたシステム手帳は、N.Y.で買ったJ&M Davidsonのもの。これもエルメスと同様にクロコのもので、チョコレート色が素敵でした。

Q.今後の手帳のご予定は?

ウェブ上でのスケジュール管理が上達すれば便利だとは思いますが、それだけにするというわけにもいかないと思います。私は、紙媒体の編集者をしているので、何かと紙である方がわかりやすい。手帳には、ちょっとした空き時間に絵コンテ案などを描いていくこともできるので、そういった面では紙に敵うものはないと思っています。

以前、先輩エディターで、「働く女性の荷物は、コンパクトにエレガントであるべき!」とおっしゃっている方がいらっしゃいました。持ち物は最小限にし、バッグもコンパクトにすることでエレガントなスタイルを目指しなさい、ということだったのですが、前述の通り私が頭の中でイメージすることは、紙を基本としたもの。結局、資料などをたくさん持ち歩いてしまい、荷物は増えてしまう一方です(笑)。なので、仕事以外のものは極力コンパクトにし、エレガントなスタイルの女性でいたいですね。

この記事の執筆者
小学館にて女性誌編集に携わる。その後、フリー編集者を経て、1992年に編集プロダクション・オフィスHATSUを設立。雑誌『Precious』のエディトリアル・ディレクターとして、創刊号よりファッションを中心に、編集企画・構成を担当している。
クレジット :
取材・構成/難波寛彦