2017年3月8日より、国立新美術館にて開催された「ミュシャ展」。日本でも人気の画家であるアルフォンス・ミュシャの、チェコ国外では世界初公開の大作が全20作も!発表されるとあって、開催前から話題となっていた本展。チェコと日本の国交回復60周年を記念した壮大なスケールのこの展覧会の、見どころをお知らせします!

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国立新美術館「ミュシャ展」会場の様子
国立新美術館「ミュシャ展」会場の様子

今回のミュシャ展は、大きく5つのパートに分かれています。

ミュシャ好き待望の大作「スラヴ叙事詩」

まずは日本初公開の「スラヴ叙事詩」全20作のコーナー。アルフォンス・ミュシャは、オーストラリア領モラヴィア(現チェコ)に生まれ、ウィーンやミュンヘンに渡り絵を学びました。そして時代の寵児として華やかな作品を手がける一方で、チェコや自身のルーツであるスラヴ民族のアイデンティティをテーマにした作品をも数多く描きました。

その集大成が、50歳で故郷に戻り、晩年の17年間を捧げた渾身の作品「スラヴ叙事詩」です。

《スラヴ叙事詩「スラヴ民族の神格化」》 1926年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery
《スラヴ叙事詩「スラヴ民族の神格化」》 1926年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery

およそ縦6m、横8mに及ぶ巨大なカンヴァスに描かれたこの20点に及ぶ油彩画「スラヴ叙事詩」が、チェコ国外では世界で初めて、まとめて公開されています。

《スラヴ叙事詩「スラヴ式典礼の導入」》 1912年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery
《スラヴ叙事詩「スラヴ式典礼の導入」》 1912年 プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery

例えばこちらの作品は、移住してきたスラヴ民族が王国を築き、キリスト教のスラヴ語翻訳の聖書や典礼が導入されたシーンを描いたもの。

もっとも手前に描かれた青年は、スラヴ民族統一を象徴する輪をもち、民族の誇りを勝利を宣言するかのように掲げています。彼や、上部の抱き合う聖人たちなど、思想を反映したような超人的な存在は暗い色で、実在する人々は清らかな光に包まれたような明るさで描かれ、そんなコントラスト使いの巧みさも見どころです。

みんな大好き、アール・ヌーヴォー作品

「スラヴ叙事詩」のコーナーが終わると、ミュシャがパリでその名を知られるようになった、アール・ヌーヴォー作品が展示されています。

国立新美術館「ミュシャ展」より
国立新美術館「ミュシャ展」より

そのほか、1900年のパリ万国博覧会に際して制作された作品のコーナーや、チェコスロバキア独立に際して描いたもののコーナー。郵便切手や紙幣などのデザインをも手がけたのだそうです。

国立新美術館「ミュシャ展」より
国立新美術館「ミュシャ展」より

装飾的なポスターやリトグラフィなど、グラフィックデザイナーでもあったミュシャの作品は、さまざまなシーン、場所を彩ったことがわかります。

国立新美術館「ミュシャ展」より
国立新美術館「ミュシャ展」より

最後のコーナーでは、習作と出版物を楽しみ、全展示作品は終了。

国立新美術館「ミュシャ展」入口ポスター
国立新美術館「ミュシャ展」入口ポスター

グラフィカルで美しい作品で名を馳せたミュシャの、ルーツに対する想いやこめられた思想を少しでも知ると、よりその美しさを深く感じる取ることができる今回の展覧会。

ぜひ会場に足を運んで「スラヴ叙事詩」のスケールに圧倒されながら、ミュシャという画家の軌跡をたどってみてくださいね。

また、本展覧会を手がけた学芸員の本橋弥生さんに、その見どころや苦心された点をインタビューさせていただきました。合わせてお読みいただくと、より深くアルフォンス・ミュシャ、ミュシャ展のことがご理解いただけるかと思います。

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■ミュシャ展

会場/国立新美術館 企画展示室2E
会期/2017年3月8日(水)~6月5日(月)※終了
開館時間/10:00~18:00 ※毎週金曜日は20時まで、入場は閉館の30分前まで
観覧料/一般¥1,600、大学生¥1,200、高校生¥800
TEL:03-5777-8600
住所/東京都港区六本木7-22-2
http://www.mucha2017.jp

この記事の執筆者
TEXT :
Precious.jp編集部 
2019.1.18 更新
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クレジット :
構成/安念美和子
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