近ごろ、ドラマや映画の原作が漫画だったり、女性誌でも漫画特集が多く組まれていたり、30~40代女性の間でも漫画熱が高まっています。でも久しぶりに読もうとすると、何を読んでいいのかわからない場合も多いのではないでしょうか。

そこで、みなさんと同世代の女性漫画編集者である、ビックコミックスピリッツ編集部所属の金城小百合さんが、女性に読んでほしい今アツい漫画をピックアップ! 漫画好きのプロが選んだのは、この5作品です!

■1:『あげくの果てのカノン』

©米代 恭/小学館
©米代 恭/小学館

「『コンビニ人間』の村田沙耶香さんが絶賛したことで話題となった作品です。理屈ではダメだとわかっていても、やめられない。そんな恋のドツボにはまっていく主人公・かのんから目が離せません。かっこいいからって嘘つきでずるい、そんな男の人を好きになってしまった経験がある女性なら、かのんの不純な恋を失笑しながらも、その切実さは否定できないんじゃないでしょうか。“どんなに控えめな女でも、希望を見た瞬間 目が血走る” 作中で引用されているスタンダールの『恋愛論』の一文です。恋ってヤバいですね」(金城さん)

■『あげくの果てのカノン』1~3巻(連載中) 米代 恭 著/小学館刊
ゼリー(エイリアン)襲来によって、機能を失った東京・永田町。ストーカー気質の主人公・かのんが、高校時代から想いを寄せる先輩とアルバイト先で再会! 気鋭女性漫画家が描く無軌道SFラブ・ストーリー。『月刊!スピリッツ』連載中。http://spi-net.jp/monthly/comic037.html

■2『プリンセスメゾン』

©池辺 葵/小学館
©池辺 葵/小学館

「寂しかったり、疲れていたり…そんなとき、本当に心を癒やしてくれる漫画です。“心を癒やす”ってよく表現されますけど、私は池辺 葵さんの漫画でだけ唯一、それを感じることが出来ます。描かれている女性たちは、ただ淡々と自分たちの人生を生きています。それが何よりも貴く、“自分の人生を生きる”それ自体が、人間賛歌であると気づかされます。素直に孤独に浸れる漫画です。6月に発売される新刊4巻に、大好きなセリフがあります」

『たとえばシスターみたいに その身を神に捧げるでもなく、誰かと愛し合って 命を捧げるでもなく、誰かのために役立つことのないまま生きる人を…神様は祝福するかしら』

「プリンセスメゾンには、その答えの一端が描かれていると思います 」(金城さん)

■『プリンセスメゾン』1~3巻(連載中)2017年6月12日、最新刊4集が発売予定。池辺 葵 著/小学館刊
マンション購入を思い立った、妙齢女子・沼越さん。たったひとつの物件に出会うため、モデルルームの常連と化し、東京中を歩きまわります。その過程で垣間見る、家を軸にしたいろいろな女性の人生も見どころです。『やわらかスピリッツ』連載中。http://yawaspi.com/princess/

■3:『先生の白い噓』

©鳥飼 茜/小学館
©鳥飼 茜/小学館

「作者の鳥飼 茜さんの主張とは違うと思うし、そういうことが直接描かれている漫画では無いのですが、それでも私はこの漫画を読むと、『自分は男に復讐したいのかもしれない』と漠然と感じるのです。自分の奥底に眠る何かが、女として生きる私に、警鐘を鳴らしている。その“何か”が知りたくて、読み続けています。自分がどんな欲望をもつ生き物なのか、この漫画を読んでいれば、いつかわかってしまうかもしれない」(金城さん)

■『先生の白い噓』1~7巻(連載中) 鳥飼 茜 著/講談社刊
平穏な毎日を送っていた高校教師の主人公が、友人の婚約者の登場により揺らぎはじめる。男と女の間に横たわる性の不平等をえぐる話題作。「このマンガがすごい! オンナ編』2014で第9位を獲得。http://morning.moae.jp/lineup/303

■4:『蜃気楼家族』

©幻冬舎
©幻冬舎

「大ヒット作『透明なゆりかご』の沖田×華さんのエッセイです。沖田さんの家族はじめ、周りの人々の生き方の多様さに救われます。人生いろいろ。生き方もいろいろ。だったらなんだっていーじゃん!…的なふっきれた笑いが、何度も起こります。それでいてなにか、人生の壮大さも感じられます。単なる爆笑エッセイに非ず、“自分だけの生き方”のヒントになる貴重な漫画です」(金城さん)

■『蜃気楼家族』1~5巻(連載中) 沖田×華 著/幻冬舎刊
看護師から風俗嬢になり、漫画を描き始めた著者の自伝。富山県魚津市の駅前の小さな中華料理店を営む一家。バラバラになりながらも、なかなか家族をやめられない怒濤の実話ストーリーから目が離せない。『幻冬舎plus』連載中。http://www.gentosha.jp/category/shinkirokazoku

■5:『アイアムアヒーロー』

©花沢健吾/小学館
©花沢健吾/小学館

「男性誌での連載作ですが、女性が読んでも本当に面白いです。英雄というひとりの人間から始まり、大きな展開をいくつも迎えながら、最後には静かにまたひとりの人間へと帰結していく物語。醜い感情も、美しい思い出も、全ての個人は、どこかしらへと進むのだと思わされました。ハードボイルドかつコメディタッチ、グロかつ最高にロマンティック、ひとりぼっちでもふたりでいたい…いろんな人間らしさの果てに、感動せざるを得ない、力強いラストが待っています。こんな物語を作り出せる人類を讃えざるを得ない、傑作です」(金城さん)

■『アイアムアヒーロー』全22巻 花沢健吾 著/小学館刊
ZQNと呼ばれる謎の感染症が蔓延し、主人公の漫画家・英雄の日常は一転。大切な人を次々と失いながら生き延びる英雄は、ヒーローになれるのか? 2009年に連載を開始し、シリーズ累計800万部を超えた作品が、ついに完結! http://spi-net.jp/weekly/comic002.html

 

女性が面白く読めるいろいろなジャンルからのセレクトは、さすがプロ! どれも続きが気になる力作ぞろいなので、読む漫画に迷ったらお手に取ってみてくださいね。

 

■『Maybe!』vol.3 好評発売中

鳥飼 茜、沖田×華のほか、今日マチ子、まんしゅうきつこなど、いま一番アツい漫画が読めます!  話題の新感覚ファッションカルチャーマガジン、vol.3発売中です。特集は、『教えて!恋愛事情』。「恋愛」をテーマにオリジナルグラビア企画、ファッション、エッセイ、漫画、インタビューなどで『Maybe!』流「恋愛のすべて」をお届けします。

『Maybe!』¥800(税抜)/小学館刊
http://www.shogakukan.co.jp/pr/maybe/

この記事の執筆者
TEXT :
金城小百合さん 漫画編集者
2017.7.3 更新
秋田書店を経て2014年小学館入社。ビッグコミックスピリッツ編集部所属。ファッション・カルチャー誌「Maybe!」の編集も担当。好きなもの:白ワイン
クレジット :
構成/安念美和子
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