7th , Apr. 2016

なぜ貴族的なまでの上等な白肌は、いっそ艶めかしいのか?

齋藤 薫さん
美容
ジャーナリスト
齋藤 薫さん
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ヨーロッパのとある高級保養地、そこで一番の由緒あるホテルは、どこからも簡単には人を受け入れない“美しい近寄り難さ”をたたえていた。がらんとしたティールームには、5、6人の初老のご婦人たち…。なんだかしばらく見惚れてしまったのは、そのエリアだけが白いオーラで包まれていたから。穏やかなのに凛とした空気に、ただならぬものを感じたからである。白い紗がかかったように、透明なのに白っぽい空気感。言うまでもなくそれこそが、上流マダムの醸し出す“特別な空気”なのは間違いないが、でもその正体、一体何なのだろうと考えた。

肌色の質…おそらくはそれ。確かに上流マダムたちは、信じられないほど豊かな白髪に、半端ではない手間をかけているが、でもそれだけじゃない。上流の白肌は、白の色合いと放つ光の質が全く違うのだ。少なくとも、上流のお手入れを積み重ねてきた結果なのは明らかだった。

そもそも美容は、ヨーロッパの宮廷貴族の間で発展してきたもので、手間の質と量はそっくり肌色に現れ出るからこそ、貴族たちは肌をおしろいで真っ白にして、その“地位”を形にしたのだろう。

今でこそ、“白肌願望”は日本人及びアジア人のものとなっているが、かつてはヨーロッパ貴族のものだったと考えてもいい。しかも、恋愛が一つの仕事のような当時の貴婦人たちには、赤い口紅や黒いホクロが映える純白の肌が不可欠だった。濁りなく、淀みなく、“清らかなのに艶めかしい白さ”がどうしても必要だったのだ。

そう、白い肌はなんだか艶めかしい。

肌の白さは、長い睫毛のように“女であることの象徴”で、触れられることを望んでいるよう。まさに、絞ったウエストくびれと、ドレスの襟ぐりから溢れ落ちそうな“胸の膨らみ”とともに、貴婦人たちにとっては、性的魅力の「三種の神器」だったのだろう。だから、ヨーロッパの上流マダムの肌には、そうした白さのDNAが今も息づいているのではないか。

ともかくそんなことを思い起こさせるほど、マダムたちの白肌は、美しいだけじゃない、艶めかしくもあったのだ。

ただ白いだけじゃない、“上等な女”の存在感を一目で思い知らせる白さの奥行き。それは、木綿の白でもレーヨンの白でもなく、めったに市場に出回らない、厚手のシルクの白。ぬめり感さえ孕んだ、なめらかな輝きがただならぬ存在感を放ち、その肌の白さだけで人々が道を開けるような、そしてその人を包む空気そのものが目に見えるような、特別な白肌。そこにシワがあっても、たるみがあっても、そんなものは取るに足らないことにしてしまう、肌色の質…。

例えば高級ブティックに入ると、隅でひっそりとハンガーに吊るされているだけのシンプルな服も、素材が上等というだけで目を奪うけれど、同じような差がそこにはあるのだ。

ふと、外資系トップブランドの美白が自然に築きあげている“ひとつ上のカテゴリー”が存在することに気づいた。そうか、外資の美白は、おそらくそこを目指しているのだ。言ってみれば貴族的な白を。

美白と言う概念は、確かに日本で生まれ、日本で進化を遂げたもの。言わば“色の白いは七難隠す国”から生まれたわけだけれど、日本で美白が生まれた時代、欧米では“ゴージャスなブラウン”に磨き上げることが“上流の証”になっていて、美白が生まれる余地はなかった。

でもそれ以前に、ヨーロッパには白さの質を問う文化があったからこそ、ラグジュアリーブランドの美白は、一般の美白市場にはない、艶めかしいほど魅惑的で、ときにはモードの一部になる洗練された白さへのこだわりが、とりわけ強いのである。

奇しくも今、美白は白さの質で選ぶ時代。一体何をもって“ひとつ上のカテゴリー”と言えるのか、それをどうか見逃さないで。「女はなぜ白くなりたいのか?」も。近寄りがたいのに、触れてみたくなるほどの“特別な白さ”をまとえたら、理想である。

 

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撮影/戸田嘉昭・宗髙聡子(パイルドライバー) 文/齋藤 薫 構成/渋谷香菜子(LIVErary.tokyo)

Presenter

齋藤 薫さん
美容
ジャーナリスト

Profile

女性誌編集者を経て独立。美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。近著『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)ほか、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。

好きなもの:マーラー、東方神起、ベルリンフィル、トレンチコート、60年代、『ココ マドモアゼル』の香り、ケイト・ブランシェット、白と黒、映画

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