10th , Dec. 2016

ジュリエッタ

情熱的な色彩に目を奪われるスペイン映画『ジュリエッタ』が公開中

生まれ育った土地や環境は、人に多くの影響を与えるもの。

強烈な日差しが降り注ぐ、情熱の国・スペインで生まれ育った映画監督のペドロ・アルモドバル。

彼がもつ卓越した色彩マジックが反映された映画『ジュリエッタ』を、映画ライターの坂口さゆりさんが語ります。

p12cinema©El Deseo


「スペインは20年前の晩夏に一度だけ行ったことがあるが、マドリードで体感した光の記憶はいまだ鮮烈だ。

シエスタの時間がやってくると街から人が消え、喧噪がパタリと止んだ。

人も音もすべてを太陽が消し去ったのではないかと思うほどの強烈な日差しは、目がくらむほどだった。

風土が芸術を生む。ペドロ・アルモドバル監督の映画を見るたびに、彼の卓越した色彩のマジックに酔わずにはいられない。

色は感情を表現し、言葉となって映画を語る。

女性讃歌3部作といわれる『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール〈帰郷〉』の豊かな色彩のなかで、ひときわ「赤」が印象深いのは、まさに「女性」や「愛」を体現するのにふさわしい色だからだろう。

p12cinema2©El Deseo


母と娘の屈折した愛情を描いた新作『ジュリエッタ』も、冒頭からスクリーンいっぱいに広がる深紅の布が強烈だ。

静かに波打つこの布は何?

そう思った瞬間、ジュリエッタ(エマ・スアレス)が着ているドレスだとわかる。彼女の心臓が脈打っていたのだ。

ジュリエッタは恋人からの誘いを受け、ポルトガル移住のために引っ越し準備をしていた。片づけの最中に青い封筒を取り出した彼女は、赤のネイルを施した指先でビリビリと破り捨てる。

だが、道端で娘の大親友とばったり再会し、12年前に失踪した娘アンティアの情報を得ると、捨てた封筒を再び拾い集める。

そこには音信不通となっていた娘の写真が入っていた。

封印していた娘を再び探すことを決意したジュリエッタは恋人と別れ、娘との思い出が詰まったアパートに引っ越す。彼女は封印してきた過去を回想しながら、娘に手紙を書き始める…。

赤と青のコントラストが印象的な本作だが、ラスト、彼女がスイスにいる娘のもとへ行く車の中で着ているセーターは、紫だ。

そう、赤と青を混ぜ合わせれば紫になる。母と娘の和解が鮮やかに示されている。

衣装のみならず、壁の色柄、絵画や小物の色や配置に注目してみると、さらに深く映画を楽しめるに違いない。

色彩でこれほど自在に映画を動かす映画監督を、私は知らない」

 

ジュリエッタ
2016年のジュリエッタが、過去を回想する形で母の愛情を描くヒューマンドラマ。現在のジュリエッタをスペインのベテラン女優、エマ・スアレス、過去を注目の新進女優、アドリアーナ・ウガルテが演じる。

監督・脚本:ペドロ・アルモドバル 出演:エマ・スアレス、アドリアーナ・ウガルテほか。新宿ピカデリーほかにて2016年11月5日より全国順次公開中
http://julieta.jp/

 

おすすめ記事はこちら

>>『怒り』が問いかける、愛する人を信じ続けるということ

>>スペイン・ビルバオにある、もうひとつの「グッゲンハイム美術館」

>>ロエベの「イケメン」デザイナー、ジョナサン・アンダーソンが手がけた旗艦店とフレグランスに注目!

文/坂口さゆり

Presenter

坂口さゆりさん
ライター

Profile

生命保険会社のOLから編集者を経て、1995年からフリーランスライターに。映画をはじめ、芸能記事や人物インタビューを中心に執筆活動を行う。ミーハー視点で俳優記事を執筆することも多い。最近いちばんの興味は健康&美容。自身を実験台に体にイイコト試験中。主な媒体に『AERA』『週刊朝日』『女性セブン』『プレジデント ウーマン』『朝日新聞』など。著書に『バラバの妻として』『佐川萌え』ほか。

好きなもの:温泉、銭湯、ルッコラ、トマト、イチゴ、桃、シャンパン、日本酒、豆腐、京都、聖書、アロマオイル、マッサージ、睡眠、クラシックバレエ、夏目漱石『門』、花見、チーズケーキ、『ゴッドファーザー』、『ギルバート・グレイプ』、海、田園風景、手紙、万年筆、カード、ぽち袋、鍛えられた筋肉

Archives

漫画家・大友克洋が「バベルの塔」の内部を描いた!巨匠・ブリューゲル作品公開記念

東京都美術館

ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル『バベルの塔』展 16 世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて-

漫画家・大友克洋が「バベルの塔」の内部を描いた!巨匠・ブリューゲル作品公開記念

LIVErary.tokyo
編集部
カルチャー
【こどもの日に観たい】小さな胸だって高鳴る!ベビー ディオールの2017年春夏コレクション

ディオール

Baby dior SS 2017

【こどもの日に観たい】小さな胸だって高鳴る!ベビー ディオールの2017年春夏コレクション

LIVErary.tokyo
編集部
ファッション, カルチャー
ワイン通は必見!「日本一のソムリエ」を決める熱き戦いで、最年少出場者が優勝

第8回全日本最優秀ソムリエコンクール

ワイン通は必見!「日本一のソムリエ」を決める熱き戦いで、最年少出場者が優勝

LIVErary.tokyo
編集部
ライフスタイル, カルチャー
大人気の「ミュシャ展」担当、本橋弥生さんに聞く「学芸員」のお仕事とは!?

国立新美術館

学芸員インタビュー

大人気の「ミュシャ展」担当、本橋弥生さんに聞く「学芸員」のお仕事とは!?

本橋弥生さん
国立新美術館
主任研究員
ライフスタイル, カルチャー
【4月25日まで】ロジェ ヴィヴィエのPOP UPイベントで銀座にいながらパリのエスプリを感じる!

ロジェ ヴィヴィエ

ポップアップイベント「Jardin Vivier」

【4月25日まで】ロジェ ヴィヴィエのPOP UPイベントで銀座にいながらパリのエスプリを感じる!

LIVErary.tokyo
編集部
ファッション, カルチャー
「ミュシャ展」大ヒット!担当者が語る、プロも苦心した巨大展示成功までの道のり

国立新美術館

開館10周年 チェコ文化年事業「ミュシャ展」

「ミュシャ展」大ヒット!担当者が語る、プロも苦心した巨大展示成功までの道のり

本橋弥生さん
国立新美術館
主任研究員
ファッション, カルチャー