26th , Mar. 2017

インタビュー

「仕事が忙しいからできない」の嘘。豊かな人生に欠かせない3つのタスク【岸見一郎さんインタビュー5】

アドラー心理学の第一人者であり、大ベストセラー『嫌われる勇気』の著者である、岸見一郎さん。インタビュー5回目は、働く女性の幸せについてうかがいます。

【第1回】女性リーダーがもつべき『勇気』とは?
【第2回】ミスをしたときこそ、部下を守れるか
【第3回】「本気出してないだけ」の後輩は、ほめず、叱らず伸ばす
【第4回】出世した女性が、男性のように振る舞う必要はない

 

第5回 仕事をするために生きているわけではない


岸見一郎さんお話し中5

――― ワークライフバランスの理想はあるものの、働く女性は日常的にとても忙しいのが現実です。自分ではコントロールできない環境におかれても、人生を豊かに生きていく秘訣はありますか?

仕事が忙しすぎて、プライベートな時間にしわ寄せがいってしまって楽しめないと言いますよね。でも、これは自分で確保するしかない。プライベート(private)という英語はもともとラテン語のプリバーレ(privare)、『奪う』という言葉が語源です。だから、プライベートな時間は自分で奪い取るしかない。もともとはないもの。うかうかしていたら、すぐ取られてしまいます。

――― まったく逆にとらえていました。「元々あるものなのに、仕事に侵されている」と。

そういうふうに考えると、向き合い方も違ってきますよね。一方で、仕事ばかりしている人には、ワーカホリックである理由がある。人生には仕事以外の課題もあります。仕事以外の他者との付き合いである〈交友の課題〉と、パートナーや家族とのあり方に向き合う〈愛の課題〉。アドラーは、幸せな人生のためには、この3つの課題のバランスを取ることが大切だと説きます。ワーカホリックの人は、ほかのふたつをおろそかにするための口実に使っている。「仕事に熱心な反面、友人との約束を守らない」とか「仕事が忙しいから、結婚できない」とか、心あたりはありませんか。なかでも愛は最も難易度の高いテーマです。仕事を言い訳に、他の対人関係を避けているのではないかと一度は考えてみてほしいですね。

――― 「仕事が好き」だから、今は他を後回しにしても頑張ろうという人もいると思うのですが……。

はい。もちろんそれは構わないです。ただ、それだけ仕事をしていても幸せではないなと感じているのであれば、仕事の取り組み方は間違っている。我々は、けして仕事をするために生きているわけではない。幸福になるために仕事をしているのです。そこがわからなくなっている人も多いのではないでしょうか。自分の幸福を犠牲にしてまで、仕事をする必要はない。本当にワーカホリックになってしまうと、判断能力が失われてしまいます。生きる喜びが感じられていないのであれば、自分の生き方に改善の余地があると立ち返ってみることです。

――― 仕事と家庭の両立に悩んでいる30代、40代の働く女性も少なくありません。

仕事と家事・育児は、どっちかではなく、どちらも大事ですよね。家事というのは、高度の専門知識を要する仕事。誰でもできることではありません。保育園に落ちて仕事に復帰できず、家事しかしていない…と落ち込むことはない。家庭に入ったからといって、自分の価値が下がるわけではありません。しかし実際は、会社の仕事のほうが価値があると思ってしまう人が多い。今の社会が生産性でしか価値を判断しないことに問題があります。こうして生きていることそのものに価値があると世の中全体が思えないと、社会が回っていかないと思いますね。会社をいったん退職、休職しても戻れるような体制を整えていく。大手企業では取り組んでいるところもありますが、まだまだ実現されていないように思いますね。現実は、仕事か家庭か、という選択を迫られる女性が多い。でも、それも女性じゃなくてもいいと思います。

――― 男性、つまり夫が一時仕事を離れる選択をしてもいいですよね。

僕の友人は官公庁に勤めていて、所属する部署で男性初の育児休暇を取りました。取得できるルールがあっても、上長が取らないと部下は取りにくい。ここは男性リーダーに率先してほしいですね。女性リーダーも、家庭のことが仕事より劣っていると思っているなら、注意を。まったく別のもので、どちらも価値があることです。多様性を認める。上司になったら、部下が働き方を選択できる環境をつくっていく。その意識をもって変革していっていただきたいですね。

 

ついに200万部突破! 現代を生きる「勇気」をくれる2部作
■『嫌われる勇気』(岸見一郎、古賀史健 著)
嫌われる勇気表紙

ダイヤモンド社/1,500円(税別)


■『幸せになる勇気』(岸見一郎、古賀史健 著)
幸せになる勇気表紙

ダイヤモンド社/1,500円(税別)

なぜ、あなたはいつまでも変われないのか?なぜ、あなたは劣等感を克服できないのか?なぜ、あなたは幸せを実感できないのか?なぜ、あなたは過去にとらわれてしまうのか?―アドラーの幸福論がすべての悩みに答えを出します。フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称されるアルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を、「青年と哲人の対話」という物語形式で紹介。欧米で絶大な支持を誇るアドラー心理学は、「どうすれば人は幸せに生きることができるか」という哲学的な問いに、きわめてシンプルかつ具体的な“答え”を提示する。この世界のひとつの真理とも言うべき、アドラーの「幸福論」はほかの誰でもないあなたが、あなたらしく生きていくためのヒントを与えてくれます。

◆プロフィール
岸見一郎(きしみ・いちろう)
哲学者。1956年京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。精力的にアドラー心理学や古代哲学の執筆・講演活動、そして精神科医院などで多くの「青年」のカウンセリングを行う。日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。著書に『アドラー心理学入門』『幸福の哲学』など。

撮影/石田祥平 構成/佐藤久美子

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