22nd , Jul. 2016

「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」に描かれたルノワールの幸福感【終了】

林 綾野さん
キュレイター
アートライター
林 綾野さん

《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》 1876年 油彩/カンヴァス オルセー美術館
©Musée d’Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF


日曜日の午後、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの庭に集う人々。手を取り合いダンスに興じる男女。身を乗り出しおしゃべりを楽しむ人たち。にぎやかな音楽、グラスや食器が奏でる音、会話、笑い声、そんなざわめきまでも聞こえてきそうな大画面。

この絵を描いたルノワールは、盟友モネらとともに、印象派という絵画の革命を成し遂げた画家。明るい色彩、輝く光の表現、今までにない主題、新しい芸術の可能性を探求し続けた彼には強い思いがあった。「楽しくきれいなものを描きたい」。観る人が幸せな気持ちになれる、そんな絵を描こうとつねに腐心した。

細部を観てみると、描かれた人々の表情は穏やかで、踊る人々の物腰もやわらかい。画家は優しいタッチを重ねながらも、手前のテーブルに集まる人々、奥に聳そびえる木、画面全体をチラチラと照らす木漏れ日など、ざわめきと光の揺らめきを感じさせる構図をしっかりつくり出している。パリのダンスホールという時代を象徴するテーマを、卓越した技法で巧みに描いた画家のまさに代表作。だれもがいつかは観たいと夢見る、そんな名画ではないだろうか。

ルノワールは、ぎゅっと幸福感を凝縮するように、構図、色のバランス、筆目にまでこだわり抜いて描いた。あらゆる階層の人々が集い、心から楽しみ、微笑んだムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会。喜びに満ちた画面を楽しみながら、ルノワールの情熱と19世紀後半のパリの息吹を胸いっぱいに吸ってみよう。

 

オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展
日本初展示の本作ほか、最晩年の「浴女たち」などルノワールを堪能するまたとない機会に!

国立新美術館
東京都港区六本木7-22-2
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
会期/~2016年8月22日※終了
http://renoir.exhn.jp/

文/林 綾野

Presenter

林 綾野さん
キュレイター
アートライター

Profile

美術館での展覧会の企画、絵画鑑賞のワークショップなどを行う。画家の創作への思いや人柄、食の趣向などを探求、紹介し、芸術作品との新たな出会いを提案。絵に描かれた“食”のレシピ制作や画家の好物料理を自ら調理、再現し、アートを多角的に紹介している。近著『なにを食べているの? ミッフィーの食卓』ほか、『フェルメールの食卓 暮らしとレシピ』『セザンヌの食卓』『モネ 庭とレシピ』『ぼくはクロード・モネ絵本でよむ画家のおはなし 』(すべて講談社)、『浮世絵に見る 江戸の食卓』(美術出版社)など著書多数。 好きなもの:仏像、散歩、奈良、高松、温泉玉子、軽い鞄、歩きやすい靴

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